かきたまじる

駅メモ・リヴリー・ノベルゲームが好き

クリスマスはいつだって辛い気持ちを呼び起こされるんだ

12月25日が毎年来ると思い出す。

私が大学生だったころ、同じゼミにいたかつての友人を思い出す。そして悲しくなる。

 

街はクリスマス・カラーに活気づく。イルミネーションで光り輝き、店はケーキやチキンをこれでもかと売り、クリスマス・ソングがしゃんしゃんと流れていた。子どもたちはサンタクロースが来るのを今か今かと待っている。

 

楽しそうな人々は楽しそうだった。

 

しかし、楽しくなさそうにしてる人もいた。「クリスマス?仕事だ」「いつも通り過ごす」「クリぼっち」クリスマスなんか知らねえよ、俺はいつも通り過ごすんだ、って斜に構える人もいた。

 

そんな中にあいつはいた。

 

あいつもクリぼっちだった。一人寂しくケーキを食うようなやつだった。一緒に過ごす家族も、友達もいない。いや。ひとりは、いた。あいつには年老いた父親がひとり、いた。

 

俺はあいつと大学で知り合った。ゼミが一緒だったのだ。「父親の面倒見なくちゃいけないからさ」と、いつも早く帰り、飲み会など全く出てこなかった。あまり積極的な性格じゃなかったが、趣味の話になると止まらない。

 

あいつの家がどんな感じだったのか、俺はよく知らない。暮らしぶりはあまり良くないのか、バイトを掛け持ちしていつも忙しく付き合いは悪かった。恋人はいなかったが、別にモテないわけじゃなくて、一度告白されたこともあったそうだが、振ったらしい。理由を聞くと「父親の面倒で手一杯なので彼女にかまってやれない」ということだった。そうだよな、好きになったら会ってないとさみしくなるもんな、とか適当に相槌を打ったことを覚えている。

 

それから、「なんだよお前ファザコンなのか」と冗談めかして突っ込んだら、父のことをあいつはぽつりぽつりと語ってくれた。父は認知症を怠り、日常生活に不自由があり、介護していかないと生活できないのだそうだ。父親の年金、バイト代、奨学金。あまり生活は良くないなか、福祉サービスに少し頼りながら生活していた。福祉サービスといえば、福祉の授業受けたときに「介護殺人」とかいうのを聞いたことがある。状況が似ているような気がした。

 

そうかそれは大変だな。とねぎらいの言葉をかけるとあいつはありがとうと笑った。

 

それからほどなくしてあれが起こった。

あれって?

あいつが事故に遭って大けがを負ったのだ。あいつはバイトを続けられなくなり、辞めた。生活はますます苦しくなった。学校にもこなくなった。来なくなったあいつのことを、心配していないわけではなかったが、そこまで気にも留めなかった。

 

12月26日、何気なくテレビを見ていたら、それを知った。

 

父親刺殺、通報した息子逮捕」

 

内容はまあ・・・ここまで読んだならわかるだろうが、あいつが父親を殺し、逮捕されたというニュースだった。クリスマスの日に。俺は彼女と一緒にテレビを見ていたが、彼女はあいつを知らなかったので、「やだ。この辺でしょ。こわい」と一言煎餅をつまみながらつぶやいたに過ぎなかった。あいつと連絡を取り合わなくなって、2年たったころだった。俺は呆けたようにニュースを見ていた。

 

なんであいつに連絡をとらなかったんだろう。今悔やんでも後の祭りだが。

 

 

 

 

 

一応補足しておきますが、

この話は嘘です。100%創作です。

メリークリスマスですよ!良い夜をお過ごしください!

筆者はどうやら思い通りのクリスマスにはならなかったようです!

愚痴が次の記事で書かれています!