かきたまじる

駅メモ・リヴリー・ノベルゲームが好き

毛玉

 きのう、中ふ頭から来たニュートラルはひどく混雑していた。小さい頃から幾度となくニュートラルに乗っているが、夕暮れ時の山手線並みに人がいた。私から見ると、乗車率は200パーセント、いや、それは盛りすぎか。とにかく人がおしくらまんじゅうしてひしめきあっていた。いつもだったら無人ニュートラルにも駅員がおり、「奥へ詰めてくださーい。奥の方が空いておりまあす」と叫んでいる。

 こんなにも混んでいるのにはわけがある。どうもインテックス大阪で大規模なイベントがあったらしい、どうりでスーツにマイナビとか書いたバッグ持ってる初々しい顔がたくさんいるわけだなあとひとりごちる。急いでいるわけじゃあないから、別にいいんだけど、なかなか電車に乗れない。2つ電車を見送り、ようやく乗ることができた。

 弁天町で乗り換えると、大阪環状線もやはり混んでいた。さすがにさっきのニュートラルほどではないが、けっこうな混み具合だ。先ほどのマイナビのバッグ持った人もちらほら、乗っている。向かい側のホームを出発する、ラッピング車両を見送り、向き直ると、カップルが3組ほど目の前にいた。蜜月期、なのか、いかにも仲よさそうな、twitterでカップル共同垢を作って「私達一生一緒(はぁと)」なんて呟きそうなラブラブカップルが3組いた。いや、別に、羨ましくなんかない。かつて私もああだったことがあったのだから。人が人を好きになって最初は、ああいう風にラブラブなのだ、たまたま彼らのその期間に私が居合わせただけなのだ。

 じゃあなに、おまえ、あのカップルたちがいつか破局するっていいたいの。自問自答、前言撤回、ああ、やっぱり羨ましいようだ。…ふと、カップル3組のうち1組、目の前のカップルの彼氏のコートに目がいった。毛玉だらけ、である。そこかしこに毛玉、毛玉、毛玉。毛玉を書きすぎてゲシュタルト崩壊するかと思われたが毛玉である。するとなんだか、彼氏が毛玉にしか思えなくなって来た。あろうことかこのカップル、近くにつかまるつり革がないので、列車の揺れを利用してか知らんが、列車が大きく揺れるごとに彼女が彼氏に抱きつくという、リア充爆発しろとでも言いたくなるような、むず痒いことを目の前でおっ広げているわけだが、いかんせん彼氏が毛玉にしか見えないので、お、毛玉がいい思いしている、と思う。そう思うとちょっとばかり、気分も晴れるというものだ。思う存分、抱きつけばいいさ。

ふっ、と彼女と私の目が一瞬交錯した。彼女は顔をしかめて、「やだあこのひと、私のことじっとみてきもい」とでも言いたげな顔をして、彼氏にぎゅっ、と抱きついた。毛玉め。