かきたまじる

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国語入試問題必勝法

blindbook。まあ、要するに、中身が買うまで何なのかわかんない本、てことだ。本にはカバーが掛けてあり、黄色いひもが結われている。さながらプレゼントのようだ。

 

黄色の本

最初は難しいですが、そこで投げ出さないでください!!すごく面白いです!!小説で笑うと言う経験を初めてしました。

 

本の情報はこれだけである。つまり、この本が売れるかどうかというのは、このpopから、面白そうと思わせなくちゃあいけない。ところで、私は、書く文章の分類で難しいのは、笑う文であると思う。文章で笑わせるというのは、なかなか難しい。泣くとかそういうのは、案外簡単なものだと思うのだが、笑いだけはとにかく、難しいと思う。

 

この書店員さんは、この本を読んで笑ったという。つまりこの本は、一人の人間を確かに笑わせた実績があるということ。ふんふん、面白そうじゃないですか、笑わせてみてくださいよ、私はレジでその本を買った。

 

さてさて家に帰り、その本の正体を暴いてやる。して、本は「国語入試問題必勝法」であった。聞き覚えのあるタイトルだ、なんか結構前に書店で話題になってたような気がするが、結局読まなかったやつだ。ぱらぱらとめくるが、受験生向けの本ではなさそうだ。短編集らしい。

 

最初の猿蟹合戦の話はどこかで読んだような文体である。なんだろうこの古めかしい文体は、見覚えがあるが、これは誰の文だったかしらね、読書好きではあるもののそこまで読んでるわけでもないので名が思い出せぬ。ええと…ただつまらない、くどくどと、猿蟹合戦についてこうも深読みできるものなのだなあとか、学の浅い私はそんなことを考えながらページをめくる。途中、やれ男が女がセックスだの出てくるから、思考がよそへ飛んでいきかけたが、捕まえて続きを読む。

 

いまはつまらなくとも、あの書店員さん言ったのだ、最初は難しいが、投げ出すなと。これでもモノ書きの端くれ、読んだ文を血肉に変えるつもりで読んでいかねば。そんな調子で読んでいくと、猿蟹合戦が終わった。次は国語入試問題必勝法である。タイトルにもなるぐらいだから、うんと滑稽話だろう、と思って読んでみたが、ああ、そう、と。さしたる笑いが起こるからでもなかった。ただ、国語ーーー特に現代文は、群を抜いて得意だったーーー私からすると、国語のできない人というのはそういう見方をしているのかあ、ほうほうほう、と思うところがあった。(国語ができないひとを馬鹿にしてるつもりは毛頭ない、私は国語以外からきしであったから、馬鹿にできる程賢くもない)

 

料理や耄碌爺さんの話が続く、楽しいが別に笑わないよ、と思いながらページをめくる。ところがそんな私を笑わせたのはそこから先で、リレー小説のところであった。確かにこれはとてつもない。佐伯さんがヒクついたように、私もヒクつかざるを得ない。特に笑いが止まらなくなったのは、青木氏の第2章である。

 

青木氏は森末氏の作った人間関係に対して、冷静に、直感的に、わからん、そんなのこまる、と言っている、それが私にはひどく面白かった、ああ脇腹が痛い、これは思い出し笑というものであろう。ページに困り、時々、青木氏の事実が挟み挟み語られるのも、笑いを誘うし、番号でページ稼ぎには、とどめを刺されたかのように笑いが止まらなかった。

 

ただ3章、4章では突然主人公が死んで事件になり、4章でとんでもないところから真犯人が出てくるのはリレー小説の醍醐味じゃないかなあと思う。私もリレー小説をしたことがあるが、最後って大変なのだ。それまでの人が広げた大風呂敷をたたまなくちゃいけないんだから。伏線とかもう全部、回収しちゃわないといけない。それが、これは3章で全てが終わってしまっている。4章どうなるんや、と私もドキドキしてしまう。

 

そして最後に、あとがき、あっての、解説だった。解説は、丸谷才一。あれこの文は、冒頭で見たな。このようなかな遣い、そうかあれは丸谷才一の文章だ。ただ私、小難しいのが苦手なもので、解説の大半を適当に読み飛ばした。理解できたのは、これがパロディ小説であること、そして、猿蟹合戦は丸谷才一をからかったもので、からかわれた当人が解説を寄せ、感想を書いている、そのことである。なるほど、元ネタを知っていればもっと面白く読めたのかもしれないなあ……。

 

 

国語入試問題必勝法 (講談社文庫)

国語入試問題必勝法 (講談社文庫)